血友病保因者の私が出産にあたり申請した助成制度
- 2021.02.08
- 制度・歴史
この度、血友病保因者である私が第二子を授かり、出産予定日まで残り僅かとなってきました。
お腹の赤ちゃんが「男の子」ということで、血友病遺伝の可能性も考えながらお産方法を考えていくのですが、そのお産が経膣分娩で順調に進まず、帝王切開でのお産になった場合、赤ちゃんだけでなく母体への負担も考えていかなければなりません。
また帝王切開になった場合、血友病保因者である私への治療が必要となり治療費が莫大なものへとなり兼ねません。
そのことを踏まえ主治医から「特定疾病療養受療証」と「先天性血液凝固因子障害等医療費助成」を事前に申請しておくよう指示を受けました。
今回は、血友病保因者である私が出産にあたり申請した助成制度について記録していきます。
*私は主治医からの指示を受け行ったので、もしかすると病院によって対応が異なるかもしれません。ただ、血友病保因者の私がこのような手続きを行っていると知って頂き、同じ状況にある方の参考となれば幸いです。
申請時期
今回の手続きは、妊娠中期の頃(出産予定日の約3〜4ヶ月前)に主治医からお話を頂き手続きを進めていきました。
手続きには申請の順番と、医師の診断書が必要なので余裕を持って手続きする必要があると感じました。
では、それぞれの助成内容と申請の様子について、申請順にご紹介していきます。
特定疾病療養受療証
「特定疾病療養受療証」は、後でご紹介する「先天性血液凝固因子障害等医療費助成」の手続きの際に必要な書類となるので、まずは「特定疾病療養受療証」から申請手続きを行いました。
対象特定疾病
- 血漿分画製剤を投与している先天性血液凝固第Ⅷ因子障害又は先天性血液凝固第Ⅸ因子障害
- 人工腎臓を実施している慢性腎不全
- 抗ウイルス剤を投与している後天性免疫不全症候群(HIV感染を含み、厚生労働省大臣の定めるものに係るものに限る)
「特定疾病療養受療証」は特定疾病にかかる自己負担の軽減措置を受ける時に申請するもので、特定疾病にかかる自己負担限度額は1万円。ただし、人工腎臓を実施している慢性腎不全の方のうち、70歳未満の上位所得者(標準報酬月額53万円以上の方)とその70歳未満の被扶養者は、自己負担限度額が2万円となります。
こちらの受療証は、保険証が新しくなっても自動更新されるので、更新手続きは必要ありません。
必要書類
- 申請書類・医師の意見書(診断書等)
- 印鑑
- *その他
*被保険者の記号番号が不明な場合にその他の書類が必要な場合があります。詳しくは郵送された用紙をご覧下さい。
私の場合、医師の意見書は「保険先が準備したもの」と「病院が準備するもの」の2種類を選択できました。今回は保険先が準備したものを選択しました。
申請手順
申請は加入している保険の種類によって異なります。申請窓口は以下の通りです。
- 国民健康保険 市区町村役場
- 政府管掌保険 社会保険事務所
- 健康保険組合 保険証に記載されている組合、または会社の保険担当部署
- 共済組合 それぞれの事務所
以下の申請手順は私の場合です。参考程度にご覧下さい。
- 加入保険協会支部へ申請希望の連絡 → 申請書類郵送
- 申請書類到着
- 医師の診断書を準備
- 書類が揃い次第加入保険先へ返送
私の加入している保険は「健康保険組合」なので、申請先は保険証に記載されている保険協会支部でした。各支部の問い合わせはネットで検索できます。
「特定疾病療養受療証の申請をお願いします」と伝え、いくつかの確認事項を行いました。
書類は速達で送ってもらえ、到着次第病院の診断書窓口へ提出。あらかじめ医師と意見書の確認を行っていたので迅速に手配することができました。
書類の記入に関しては保険証を確認しながらできるのでとても簡単でした。
書類の手配はホームページやコンビニからも可能
健康保険組合ではHPやコンビニから書類の手配が可能なようです。
- 協会けんぽのHPより申請書類の印刷が可能(無料)。
- また、全国のセブン-イレブンでも申請書類の印刷が可能(1枚20円)。
先天性血液凝固因子障害等医療費助成
原則20歳以上の者で、対象となる疾患に関する治療を受ける際に医療費が公費で負担される制度。
受給者証には有効期限があるため、更新手続きが必要です。
*申請場所や申請用紙など、各都道府県によって異なるようなので、まずはお住いの地域を管轄している保健所やHPでご確認下さい。
対象疾患
以下の先天性血液凝固因子欠乏症及び血液凝固因子製剤の投与に起因するHIV感染症
- 第1因子(フィブリノゲン)欠乏症
- 第2因子(プロトロンビン)欠乏症
- 第5因子(不安定因子)欠乏症
- 第7因子(安定因子)欠乏症
- 第8因子欠乏症(血友病A)
- 第9因子欠乏症(血友病B)
- 第10因子(スチュアートプラウア)欠乏症
- 第11因子(PTA)欠乏症
- 第12因子(ヘイグマン因子)欠乏症
- 第13因子(フィブリン安定化因子)欠乏症
- Von Willebrand(フォン・ヴィルブランド)病
必要書類
以下の必要書類は私が住んでいる都道府県HPより検索し、準備したものです。参考程度にご覧下さい。
- 先天性凝固因子障害等医療費助成交付申請書
- 住民票または住所が確認できる公的証明書
- 医師の診断書
- 健康保険証の写し
- 特定疾病療養受療証
申請手順
申請方法は各都道府県によって異なります。お住いの都道府県HPより申請方法を確認して下さい。以下の申請手順は私の場合です。参考程度にご覧下さい。
- 住まいの都道府県HPより申請方法を確認
- HPから申請用紙を印刷
- 医師の診断書を病院の窓口に申請
- 申請書類が揃い次第、住まいの都道府県に郵送
今回、「特定疾病療養受療証」と「先天性血液凝固因子障害等医療費助成」の両方に医師の意見書・診断書が必要だったわけですが、私の通院先では一度に2つの書類を申請することはできませんでした。
「特定疾病療養受療証」の意見書を受け取った後、改めて意見書の申請を行ったので申請用紙への記入や受け取りの手間がかかりました。
自分に適応される制度を知る大切さ
今回、血友病保因者である私は、「特定疾病療養受療証」と「先天性血液凝固因子障害等医療費助成」を申請し出産に挑む訳ですが、実はこの制度を提案してくれたのは息子の主治医でした。
それ以前に、産婦人科の主治医に「血友病保因者である私が帝王切開で出産し製剤等を使用した場合、医療費は高額になりますか?」と質問していました。
その時の返答は「いいえ、経膣分娩とそんなに変わりませんよ」と伺っていました。
その後、産婦人科の主治医と同じ病院の小児科医である息子の主治医が、私のお産についてディスカッションして下さり、小児科の主治医から制度申請についてお話を頂きました。
結論、産婦人科と小児科の両方の主治医から提案して頂いたことにはなりますが、「病院や担当医師によってそれぞれの疾病に対する制度に詳しくない場合があるのでは?」と感じました。
産婦人科の主治医は、保因者のお産に携わった経験がおありですが、あくまでも産婦人科専門医であり血友病専門ではありません。逆に、小児科の主治医は血友病専門医なので、その点でも知識の差が出てくるのかもしれません。
患者である私たちがそれぞれに適応される制度について知ることはなかなか難しいです。
調べれば情報は出てきますが、記載内容が難しかったり自分に適応されるのか分からない場合も多いのではないでしょうか。
今回ご紹介しました、血友病保因者が出産にあたり申請できる「特定疾病療養受療証」と「先天性血液凝固因子障害等医療費助成」が少しでも多くの方のお役に立てますように。
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