もう注射は痛くない!最新の痛くない注射針・針のない注射器をご紹介
- 2020.04.06
- その他
前回の記事では、現在の注射治療の中でできる「注射の痛みが和らぐかもしれない様々な工夫」をご紹介していきましたが、今回は、テレビで紹介されていた「痛くない注射針」「針のない注射器」をご紹介していきます。
現在の医学・科学のおかげで、私たちも十分な治療を受けられている訳ですが、その裏には今回紹介する「痛くない注射針」を開発された方々のように、「人のために」と必死で頭を悩ませ努力されている方がいるということに感謝して治療に励みたいと感じさせられました。
注射の歴史
「注射はなぜ痛いのか?」
注射の痛みは、人間の皮膚にある『痛点』を刺激することで起こり、その痛みは注射針が細いほど感じにくくなっていきます。これまで痛みの少ない注射針を作るため、科学者たちは何度も何度も研究を繰り返して来られました。
こちらは、現存する最古の注射器のイラストです。
1853年のもので、針の外径は3.5mm。50円玉の穴とほぼ同じサイズでした。それが昭和初期になると外径1mmにまで改良されました。
そして、現在使用されている最も細い注射針のイラストがこちら。
2019年2月25日に医療機器メーカー テルモ から発売された「ナノパスJr.」。外径はわずか0.18mmとおよそ髪の毛2本分の細さにまで改良され、主に、インスリンや成長ホルモンを自己投与する際に使用されています。
ただ、研究によると「痛みを感じない細さは約0.1mm以下」とのこと。この0.1mm以下に少しでも近づけようにと開発者たちは努力しますが、そこには「針を細くすると強度が弱くなり折れてしまう」という大きな問題がありました。
今回紹介する注射針は、強度の問題を解決し痛みを感じないとされる約0.1mmの注射針を実現。更には「注射針のない注射器」までもが開発され、未来の子供に「注射は痛い」というイメージはなくなっているのかもしれません。
シンクランドSeleiaの刺しても痛くない注射針
「痛くない注射針」を開発されたシンクランドは、レーザーや光ファイバーなどで小さな部品を加工する光技術の会社。そんな会社がなぜ注射針を開発することになったのか?そのきっかけは、糖尿病を患う社員が毎日自分でインスリン注射を打っていた事でした。
日本の糖尿病患者は年々増加傾向にあり、その中には子供の患者も多くいらっしゃいます。患者によって個人差はありますが、1日に3回以上注射を打たなければならないという現実に心を痛め、「痛みに苦しむ子供達を救いたい」と痛くない注射針の開発を決意されました。
「自分たちのレーザー技術で細い注射針を作れるはず」と開発に励み0.1mmの針を実現させましたが、何度やっても折れてしまう「強度」という大きな壁にぶつかってしまいました。
開発に行き詰まりながらも、注射に苦労する患者とその家族からの励ましの言葉を原動力に日々努力していたある日・・・
「どうしても折れてしまうなら折れてもいいもので作ればいいのでは!?」という発想から、針が体に残っても溶けて無くなり害がない、内臓を縫う糸の原材料である「水溶性プラスチック」で針を作ってみることに。
これに成功し、プロジェクトから5年で0.1mmの注射針を完成されました。その注射針のイラストがこちら!
まるで、液体スティックのりのようなフォルムですね。十分な量を投与する為に25本の短い針が並べられた、とても特徴的な注射針。初めはインスリン投与目的で作られたものでしたが、予防接種やワクチンの投与などにも応用できるそうです。近い将来、世界中の子供達に提供することを今後の目標とされています。
針のない注射器 AIJEX50
こちらは世界初!「針がない注射器」。バネの力で、秒速150m(時速540km)で薬液を飛ばし皮膚を貫通させて体内に薬液を入れるというもの。薬液の直径は0.04mmなので痛みは感じないとのこと。
その注射器のイラストがこちら!
番組内で出演者の方が実際に体験されていましたが、「水が当たっただけ」と感想を述べられていました。注射の概念を変える発想で驚くとともに、実用化されれば注射で悩む人の数が大きく減ることは間違いないと感じました。
刺しても痛くない「シンクランドSeleia」、針のない注射器「AIJEX50」どちらも3年以内の実用化を目指しておられます。
血友病治療に痛くない注射針は使用できるのか?
「痛くない注射」は本当に画期的で、予防接種等で痛い思いをしている乳幼児や、1日3回も注射をしなくてはならない糖尿病患者様の負担を大きく低減してくれますね。
「この痛くない注射針を血友病でも使用できないものか?」
ここからは、医学・科学の知識が全くない私の勝手な考えですが、私が認識している現在の血友病治療では「使用できても、痛みは取り除けないのでは?」と感じました。
まず、血友病患者様の多くは静脈注射での治療ですよね。今回紹介した針や方法では血管に針を入れることができません。
ヘムライブラは皮下注射ですが、「針を刺すことより薬液が体内に入る時の方が痛い。」と息子の日々の治療から感じ取られます。(息子は静脈注射で定期補充をしていた際、針が刺さる時の痛みには慣れていました。)
予防接種には様々な種類がありますが、その中で最も痛みを感じるのはインフルエンザワクチン。ヘムライブラはこれを上回っている?と息子を見て感じます。痛みの感じ方には個人差があり、アレルギー体質(息子はアレルギー体質です)や薬液の量も痛みに大きく関係しているようなので、この「薬液が沁みる」という問題を解決しなければ、息子の注射の痛みは無くならないかもしれません。
とは言え、注射の痛みには多くの子供達が悩んでいます。今回紹介した「痛くない注射器」が今後普及し、子供達が『注射は痛くないもの』と認識できるようになれば、病院へ付き添う親御様の苦労も軽減されていきますね。
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