血友病の保育園・幼稚園の入園活動に関するアンケート結果(#1)
- 2020.08.13
- 学校・スポーツ
いつも『LIFE~血友病と生きる~』をご覧頂きまして誠にありがとうございます。
この度当サイトでは、これまで血友病のお子様の入園活動を経験された親御様を対象に「血友病における保育園・幼稚園の入園活動に関するアンケート」を実施致しました。
小さなサイトにも関わらず私たちの予想以上である16名の方々にご協力を頂き、血友病と社会との繋がりを改めて考えさせられる充実したアンケートとなりましたこと、心より感謝申し上げます。
こちらの記事では、そのアンケートについての結果をご報告させて頂いております。
今回のアンケート内容がこれから入園活動をされる方の参考となり、少しでも良い環境で入園活動が行われますことを強く願っています。
はじめに
保育園・幼稚園の入園活動にはお子様の治療状況はもちろん、お住いの環境によっても大きな差が生まれます。
今回、アンケートにご協力下さいました皆様も、それぞれの環境や境遇、そして様々な想いを胸に入園活動を経験されています。今回のアンケート結果とご自身の考えや想いを重ね比較しながら、あくまで参考としてご覧下さい。
また今回のアンケートの最後には【入園活動のエピソードやこれから入園活動に当たられる方へのメッセージ】をご記入頂く欄があり、皆様お忙しい中にも関わらず、貴重なエピソードを多数お寄せ下さいました。
どれも心に刺さるものばかりのため、一つ一つのエピソードとしっかり向き合いまとめた上で改めてご報告させて頂きますので、今しばらくお待ち下さい。
*今回のアンケートに至った経緯や想いについてはこちらの記事をご覧下さい。
お子様の重症度と入園活動の実施時期
アンケートにご協力下さいました方の、お子様の血友病重症度についてお伺いしました。
今回のアンケートでは重症・中等症・軽症の方にご協力頂くことができました。
2020年〜2011年に入園活動された方に回答を頂きました。幼い頃から定期補充療法を導入されている方が多いと予想されますので、このアンケート以降に入園活動される方はより近い感覚でアンケートをご覧頂けると考えます。
入園活動の意識と開始
保育園・幼稚園への入園を意識された時期についてお伺いしました。
[妊娠中から・生後まもなく]という割合が多いことから、保因者の方も回答下さっているかも知れませんね。
ちなみに、保因者であることを知らなかった私は[血友病と診断されてから]に該当します。心配事がなければ我が子の可愛い姿だけを想像していましたが、血友病と診断を受けた瞬間から、他人に預けること・集団生活に大きな不安を抱えていました。
保育園・幼稚園への入園には、申請書類の提出や面接などを経て入園を決定していきます。時期については、地域の役所や施設によって異なります。
【 入園しやすくするための工夫について 】で詳しくご紹介しますが、入園活動の方法も様々です。プレスクール(体験入園・慣らし保育)を利用すると長期的な入園活動が想定されますが、[1〜5ヶ月前]という回答が過半数を占めており、全体の約87%が1年以内の活動期間であったことには意外性を感じました。
健常者の平均的な入園活動期間は分かりませんが、この結果をみると「病気を抱えているから健常者より早く入園活動をしなければならない」といった焦りのようなものは必要ないのかも知れません。
公共施設への園活動の相談について
やはり、入園の手続きや申し込みの基盤となる[市役所]が多く利用されていますね。次に多い[子育て支援センター]では、同じ地域にお住いの誰もが利用し交流できる場なので、お子様同士だけでなく親御様同士で情報を収集・交換し合うことが可能です。また、子育て支援センターでは元保育士の方が働いておられる場合もあります。血友病に特化した情報収集は難しいかも知れませんが、市役所では聞けなかったり、入園希望の園では直接聞きにくいような質問も気軽にできる場所かも知れません。
さて、この質問が2020年〜2011年の血友病と社会のつながりを表す数字となります。
血友病は希少疾患のため認知度が低いと言われますが、【入園活動に利用した公共施設】の回答で、様々な情報を持つ[市役所]や地域に密着しいろんな形で活動をされている[子育て支援センター]が多く選択されていても、[血友病を知らない]割合が多いという結果となりました。
私の地域でも血友病を認知しておられず、「相談に行ったのに誰も知らない」という現実には大きな壁を感じてしまいました。少し悲しい現実ではありますが、こうゆうことを事前に把握しておくことは心を強く持つために必要なのかもしれません。
しかし、このような現状が多いにも関わらず[病名・症状を詳しく知っていた]という地域があったことはとても嬉しく、血友病を知っている人もいるんだと、これもまた強い心の支えとなりますね。
公共施設での相談の満足度についてですが、[参考になった]という回答があったことに喜びを感じる反面、相談したにも関わらずその内容に満足できていないという状況が多いことに大きな寂しさを感じました。
「血友病の認知度は低い」「相談しても満足できない」。では一体どこを頼ればいいのでしょうか?
[どちらとも言えない]という回答が多かった背景として、役所では「住まいの保育施設マップ」を配布してくれたり、入園の方法や加配等の制度についての説明を行なってくれます。特に初めての園探しとなれば住まいの施設状況や受け入れ体制などは欠かせない情報です。その一方、血友病に対する情報があまりにも少ないという点で[どちらとも言えない]が過半数を占めたと推測します。
血友病を抱えているとは言え、通常の保育施設に入園させるためには一般的な入園情報は必要不可欠です。プラスαで病気に関する情報がもらえればそれで十分というのが現状なのかも知れません。
公共施設以外の相談先について
[病院]が圧倒的に多いですね。「病院の先生が保育園・幼稚園の情報を持っているの?」と思ってしまいますが、出血リスクの観点からも主治医への相談は必要不可欠だと考えます。
長年勤務されている先生なら地域の情報をお持ちかもしれませんし、希望する園への病気説明に協力して頂けるはずです。
そして家族はもちろん、SNSでの繋がりも園活動の強い味方となります。今回のアンケートでもそうですが、同じ道を通って来られた先輩方の協力はとても強い味方となります。
SNSを通して市役所などでは得られなかった情報を収集できるかも知れませんね。
入園を希望する園への見学・病気の説明について
回答者の殆どが入園へ希望する園へ見学・病気の説明を行なっておられました。子供を安心して預けるという意味でも、直接先生や園の雰囲気を感じる事は大切なことかも知れません。
今回のアンケートでは[はい]の回答が多い結果となりましたが、[いいえ]の回答があったように、治療環境や生活環境によって考え方は異なり、入園先の病気に対する受け入れ方、考え方によっても説明の有無は変わってくるでしょう。
血友病治療薬の発展で日常における出血リスクはかなり低減されて来ています。「保育園や幼稚園での活動は制限なく行える」と言われる今、それが更に立証されていけば、園への病気に関する情報提供も簡単なものになり、我々自身の考え方にも変化が生まれてくるのでしょうか?
やはりここでも血友病の認知度の低さが伺えますが、様々な情報を抱える公共施設でさえ血友病を認知していないのですから当然の結果だと考えます。
しかし、この「知らない」ということが病気の説明を行う際に、私たちと園との間に大きな差を生むきっかけにもなってしまいます。
病気の説明を行う際の工夫について
11.保育園・幼稚園に血友病を理解し受け入れてもらうために行った工夫などありましたらお教え下さい。(以下順不同)
- 血友病の資料やパンフレットを持参し、それを基に園に説明した
- 血友病についての資料を自作し、園に説明を行なった
- 病院と連携して園に説明を行なった
- 主治医からの説明を受けて頂く機会を設けた
- ヘモフィリアサイトで保育園向けの冊子をコピーし渡した
- 製薬会社さんから貰える保育園幼稚園向けの冊子や絵本を持参した
血友病の認知度が低い中で、どのように工夫して病気の説明を行なってきたのか皆さんにお伺いしました。
何かしらの資料を持参することで、説明を行う身としてもスムーズに進行することができますね。
血友病の出血症状や治療環境・病気や園生活への考え方は人それぞれです。それぞれにあった方法や内容で説明することが園生活をより良く送るためにも大切なことかもしれません。
血友病の保育園・幼稚園入園に関する資料については、病院へ相談すれば取り寄せ可能かと思います。アンケート回答でもありました、血友病のサイトでも入手可能なようですね。
自作で資料を作成された方は、[血友病の症状・使用中の薬剤・通院の頻度・出血時の対応・その他園へのお願い]などをまとめておられたようです。血友病の資料を持参された方もこちらに重きを置いて説明をされたと思いますので、是非ご参考下さい。
入園しやすくする為の事前準備
12.保育園・幼稚園へ入園しやすいように事前準備などありましたらお教え下さい。(以下順不同)
- 公立なら病児、障がい児の入園に合わせて職員配置するため、人員増は求人も必要になり時期が重大。申込受付時期よりも前に役所へ相談すること
- 定期注射からヘムライブラに変更した
- 園庭開放に行った
- 入園前に話し合いを行なった
- プレスクール、園庭開放に参加して子供の様子を見てもらって、どんな性格の子か知って貰った。
- プレスクール前の親子教室に通っている
- ヘッドギアの着用の練習
- 診断書の提出
お子様を保育園・幼稚園へ入園しやすくする為の工夫についてお伺いしましたが、どれもとても大切なことで貴重な情報だと思います。
まず、公立と私立には大きな差があります。公立は病気や障害によって入園を断ることはありません。そして状況によっては加配(保育士の増員)も可能です。しかし、ご回答頂いたように人員増の為の求人募集が必要となり役所への相談申請が必要となります。逆に、私立での加配や看護師の配置は、障害認定を受けている者しか補助金がおりないなど、金銭面からまず無理だと考えておいた方が無難だと思います。
そして私もやっておけば良かったと後悔した、プレスクール(体験入園・慣らし保育)や園庭開放の利用。気の知れた先生に預けられることほど安心できるものはありませんし、ゆっくりと時間をかけて病気の説明も行えますね。
園によってはプレスクール優先の入園もあるようで、周辺地域の園の情報収集は大切ですね。
そして出血への対策も大切です。園での活動がそれほど活発でなくても、元気な子供達との集団生活です。現在の治療状況・出血状況を改めて見つめ直し事前に主治医と相談しておくことはとても重要です。
親御様自身も安心して預けられるような環境づくりを行なっていきたいですね。
園探しのポイントについて
皆様が、どのような所にポイントを置いて園探しをされたのかお伺いしました。
通園距離はもちろん、出血時の緊急対応などを想定しながらご参考下さい。ご回答頂いた内容の中には新たな選択肢となるものが含まれているかも知れません。
入園した園の満足度について
少数ではありますが、[いいえ]の回答があったことはとても悲しいことですね。
時々、園での虐待が報道されるように、『入園してみないと分からない・親の見えない部分』は当然あります。
コミュニケーションの積み重ねや子供の様子を観察するだけでは分からないことも多いかもしれません。
かと言って、常に疑って預けることは信頼の低下にも繋がりますので、結局のところ『信頼』だけでやって行くしかないんですよね。
まとめ
最後までご覧頂き、誠にありがとうございました。今回のアンケート結果はいかがでしたか?皆さんのイメージとどのような差がありましたか?
病気を持って社会と繋がろうとするとき、「理解してもらいたい」と強く願う一方、「受け入れてもらえなかったらどうしよう」というマイナスな考えも浮かんでしまいます。
今回のアンケートの中でも血友病の認知度の低さが結果として出ましたが、「血友病を知っている」という回答があったことも事実です。ここで、割合の多かったマイナスイメージだけを持つのではなく、プラスのイメージを持って社会と関わって行くことの方が大切なのではと強く感じました。
実際に、アンケートにご協力下さった方のお子様は皆、園生活を送って来られたのですから、それだけの理解や受け入れがあったということです。
園活動を行う中で辛い経験もあるかもしれません。しかし、辛いばかりではないと強く歩むためにも、今回のアンケートのようなリアルな現実を知ることは必要だと私は考えます。
そしてこの情報が「辛い経験を回避する為の新たな対策を生むきっかけ」となることを願います。
アンケートにご協力頂いた皆様へ
この度当サイトで実施致しました「血友病における保育園・幼稚園の入園活動に関するアンケート」にご協力下さいました皆様、お忙しい中にも関わらず貴重な経験談をお寄せ頂きましたこと、重ねて感謝申し上げます。
また、今回のアンケート実施に際しまして、入園活動を経験された保護者様だけでなく、血友病患者様からも応援・サポートを頂けましたことは本当に心強いものでした。改めて感謝申し上げます。
血友病の治療が日々進歩していく一方、病気と社会との温度差に悩んでしまうことも少なくありません。そんな時、これまで様々な壁と戦いながら前進し続けた皆様の経験は、これから病気を抱えて社会へ歩まれるご家族様の大きな糧となることを願っています。
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