実話から学ぶ!スポーツを通して出血しにくい体をつくり、社会性を育もう。

実話から学ぶ!スポーツを通して出血しにくい体をつくり、社会性を育もう。

適度な運動は、誰にとっても健康な体づくりのために大切なことで、特に血友病患者さまにとっては出血しにくい体をつくるための大切な治療法とも言えます。

そして、スポーツでは健康な体づくりだけでなく、コミュニケーション能力・精神力・忍耐力など、社会で役立つ大切なことを学ぶ事ができると言われています。

今回は、スポーツを通して得られるものを、主治医から伺った実話や私の体験談を含め記事にしています。
スポーツに対して出血のリスクばかりを考えてしまいがちですが、スポーツを通して得られるものを知り、前向きな気持ちでスポーツに取り組んでみませんか^^

 




血友病患者さまにとってのスポーツとは?

スポーツの種類によっては出血リスクが高く、血友病患者さまにはオススメされないスポーツもありますが、定期輸注の定着により、血友病患者さまでも様々なスポーツに取り組める環境となってきました。
血友病患者さまにもスポーツが推進される今日ですが、スポーツを通してどのようなことが得られるのでしょうか?

 

出血のしにくい体をつくってくれる

血友病患者さまに適度な運動やスポーツが推進される大きな目的は筋力の向上です。

【筋肉向上で得られる利点】
・関節を保護し出血しにくい体をつくることができます
・バランス感覚が養われ怪我のしにくい体をつくります
・減量効果で、肥満による体への過度な負担を減らしてくれます

 

血友病治療の中でも重要な出血の一つである“関節内出血”は、繰り返すと“関節症”を起こしてしまいます。
関節内出血を防ぐ方法は、定期輸注を導入し、違和感を感じたり出血をした際は輸注をすることが一番の治療法ですが、筋肉を鍛え関節を保護することでも、関節内出血へのリスクを低減することができます。

また、幼児期の活発な遊びの中でも筋肉は鍛えられ、遊具遊び・かけっこ・お遊戯などを通して、バランス感覚を養ったり、危険察知能力も学んでいきます。

【関節内出血について】の記事はこちら

 

社会性を育んでくれる

「運動とスポーツ」という言葉は同意語として捉えがちですが、実際には大きな差があります。

〜運動とスポーツの違い〜
・スポーツにはルールがあるが、運動にはない
・スポーツは勝敗をつけるが、運動はつけない
・運動は一人でできるが、スポーツはチームや対戦相手が必要

 

スポーツには集団競技と個人競技がありますが、どちらも相手と競い合うことで自分を高め、目標を達成することで自信やスポーツの楽しさを学ぶことができます。また、先輩後輩などの上下関係に触れることで社会のルールやマナーを学び、その中でコミュニケーション能力や人との繋がり・絆を築いていきます。

「勝ちたい・技術を習得したい」などの目標に向かって行われる練習や試合を通し繰り返される達成感や悔しさは、忍耐力や自己向上能力を高め、人生の糧となるでしょう。

 

やっぱり出血が心配!どのスポーツを選択すればいいの?

「定期輸注やスポーツに取り組む際のルールをしっかり作っておけば大丈夫!」とはいえ、特に幼児期〜児童期では「まだまだ自己管理が甘く心配」というママが多いのではないでしょうか?
私も不安や心配しかありませんが、私自身、小学生の頃から厳しい環境の中でスポーツをしてきただけに、スポーツの楽しさや得るものの大きさは理解しているつもりです。

スポーツに限りませんが、それが自発的なものでないと取り組む意味がないこともよく知っています。

子供のやりたいスポーツに対して親の不安が尽きることはありませんが、子供の気持ちを受け入れた上でサポートしていくことは、親子関係を築く上でも大切なことかもしれません。

【各スポーツの出血程度について】の記事はこちら

 

厳しかった部活動【体験談】

私が小学3年から高校までの約8年間続けたバレーボール。骨折しながら、泣きながら、怒られながら続けてきました。中学時代はいわゆるスパルタ教育で、上下関係にも厳しいルールがたくさんありました。
高校入学時にはバレー部には入らないと考えていましたが、先輩の勧誘に負け入部^^;中学時代にあった上下関係はなく、練習も自発的なものが多くなりました。
それでも厳しい中学時代の名残から、”怒られないように、ミスしないように”と消極的になり、自分自身にプレッシャーを与えてしまうことがしばしばありました。

 

しかしそんな辛い練習から学んだのもは多く、厳しい練習を乗り越えてきたことへの自信や、チームや後輩を持つことで生まれる責任感共に頑張った仲間との絆は、社会に出てから強く発揮されているように思います。
辛かったスポーツもいい環境や仲間に出会えれば、人生に生きる大きな思い出となりました。

 

私が入部した部活動はどの時期も厳しいもので、激しい練習や筋トレは欠かせませんでした。もしかすると私の息子も、皆さんのお子さんも、「強豪校でスポーツをしたい!」「ラグビーをしたい」と出血リスクの高いスポーツや練習環境を選ぶかもしれませんよね?
そんな時、皆さんはどう対応しますか?


危険度の高いスポーツは絶対に挑戦してはいけないの?

中程度〜高度の出血が伴うスポーツを見ていると、「安心してできるスポーツは限られているのかなぁ?」と考えてしまいませんか?

現在2歳の息子は走るのが大好きで、「今日は何が楽しかった?」と聞くと「追いかけっこ^^」と答えます。競争することが好きなようですが、陸上競技にも中程度の出血リスクがあると思われるので、“陸上競技をする上で我慢しなくちゃいけないことがたくさんありそうだなぁ”なんて早くも心配しています。

 

どの競技が自分にとって最適なのか?
出血リスクばかりを考えていては運動への興味がなくなってしまいそうですよね^^;

以下は、主治医からお聞きした実際のお話です。

 

ラグビーに挑戦したい【実話】

自分が血友病であることを認識しながら”ラグビー”に挑戦した高校生がいらっしゃいました。
親や主治医の許可をもらい、チームメイトの協力のもと練習に参加しましたが、まもなく痛みや出血が見られ断念せざるを得ない状況となってしまいました。
その後、退部を考えていましたがチームメイトの希望により、そのチームのマネージャー業を行うことになったそうです。
結果的には出血のリスクを背負ってしまい、ラグビーを諦めることになってしまいましたが、本人に後悔はなく、むしろすっきりとした気持ちでいらっしゃるそうです。

 

〜この話を受けて〜

もしかしたらこの方は、ラグビーをすることで大きなリスクを背負うかもしれない事を強く自覚していたのかもしれません。それでも、挑戦したい気持ちを抑えられなかったのではないでしょうか。
ラグビーは血友病患者さまには推進されていないスポーツなので、挑戦したいと打ち明けられた時、ご両親はとても動揺したと思います。心配に思う気持ちは計り知れませんが、それでも本人の意思を尊重された行動に感銘を受けました。
そして、結果継続することが不可能になってしまっても納得して諦めることが出来たのは、挑戦したことへの達成感をしっかりと感じられたからではないでしょうか。またこのお話から、スポーツは選手でなくても携わることができると学べますね^^

 

吹奏楽部に入部したけれど・・・【実話】

血友病のある患者さまは、吹奏楽部へ入部しました。
体を動かすことの少ない吹奏楽。一見、出血のリスクはなさそうに思いますが、実はこの方、足を痛めてしまったのです。重たい楽器を持ち、長時間座った状態の日々の練習が原因でした。

 

〜この話を受けて〜

その後どのような経緯に至ったのかは伺っていませんが、ラグビーと対照的なイメージの吹奏楽で出血するなんて驚きました。
確かに重たい楽器は肘にも負担がかかるでしょうし、我々でも長時間同じ体勢でいると体に負担を感じますよね。“運動部じゃないから出血の心配はない”なんてことはなさそうですね。
社会人になってからのデスクワークなどでも関節に違和感を覚えてしまうのかもしれません。運動部・文化系どちらにせよ、適度に休息を取ることが重要ではないでしょうか。



自発的選択を尊重してあげよう

今回、“スポーツに取り組もう”とオススメしてきましたが、運動の苦手な方がいらっしゃれば、集団競技が苦手な方もたくさんいらっしゃいます。
運動も自分で目標を立て達成することで、自信や自立心を育てることができますし、勉強面で目標を立てることも同様のものを得ることができると思います。

大切なのは自発的に行うこと!
どんなことでも挑戦することは人生で役立つ大切なことを教えてくれます。

特に幼少期〜児童期の自発的行動は、挫折しても必ず次に繋がる何かを学ばせてくれるはずです。

 

まとめ

実際、出血程度や生活スタイルには個人差があるので、運動やスポーツの選択の仕方は様々です。
だからこそ、その選択は難しく、正解も不正解もないと感じます。

しかし、冒頭でお伝えしたように、血友病治療において関節を守る筋肉を作ることは出血しにくい体になるために大切なことです。

「体を動かすことが好きな方は、スポーツに積極的に取り組んで下さい。」

「運動の苦手な方は、1日の空いた時間でいいので散歩に出かけてみて下さい。」

それぞれの体や性格に合わせた方法で体を動かしていきましょう。
もしかすると血友病患者さまは、健常者さまに比べて健康な体だと言えるのではないでしょうか^^