日本における血友病の治療環境について
- 2019.08.19
- 治療・環境
血友病治療は、医師が治療法の判断に迷ってしまうほどに次々と新薬が開発され、患者さま一人一人に合った治療を選択できるとても良い時代にありますが、それを受けることのできる医療機関は果たしてどの程度なのか。
今回は『日本における血友病の治療環境』についてお話ししていきたいと思います。
増える血友病患者
平成21年度 血友病A:4,317人 血友病B: 933人
平成30年度 血友病A:5,301人 血友病B:1,156人
近年の血友病治療の著しい発展により、古くは11歳と言われていた寿命が健常者と変わらず年齢を重ねられるようになりました。それにより、血友病患者は増加傾向にあるそうです。
出血リスクの最も高い出産時も的確な処置により救われる命が多くなったことで血友病は更に増えていくと思いますが、遺伝子治療により減少していく未来もくるかもしれませんね。
日本の血友病治療環境
専門医が少ないとされる血友病。一昔前は、血友病治療で有名な「奈良県立医科大学付属病院」の近くに引越した患者さまも多くいたようですが、その環境は少しずつ変化しているようです。
奈良医大のように血友病患者を100名以上診ている「拠点病院」と血友病患者を50〜100名診ている「地域中核病院」が連携を取り、少しでも患者さまにとって良い治療ができる環境作りがされているようです。
息子は地域中核病院で治療を受けています。血友病診断検査時には、通常数日かかるものを奈良医大との連携により半日で診断結果を出し迅速な治療を行ってくださいました。普段の治療の中でも、かかりつけ病院と拠点病院で相談して治療法を選択することも多くあります。
血友病患者さま一人一人にあった治療を選択する時代に合わせた環境づくりが目指されていますが、「かかりつけ病院まで片道2時間かかります」というような環境にある患者さまが多いのも現実のようです。
受けられる治療の限界
息子がお世話になっている地域中核病院では、血友病患者さまを50名ほど診られていて比較的多い患者数ではありますが、そこで受けられる治療は限られています。
私たちは年2回、拠点病院である奈良医大へ足を運び息子の治療経過報告・相談をさせて頂いていますが、普段の治療の中で奈良医大の力が必要になることもあります。
例えば「関節の画像診断」は、MRIやレントゲンが使用できても専門の知識を持って診断できる専門医がいないこと、「遺伝子検査」「ヘムライブラの止血モニタリング」はかかりつけ医院に設備がない事が理由です。特に「ヘムライブラの止血モニタリング」は日本で奈良医大しか行う事ができません。
普段、大きな拠点病院で治療を受けていても奈良医大で診察を受けている方も多くいらっしゃるので、『血友病=奈良医大』というイメージはまだまだ強く感じますね。
患者さま同士が身近な時代
まだまだ認知度の低い血友病。専門医も少なく治療法の選択も医師によって様々なため、提示された治療法に不安を覚えたことはありませんか?
これまで血友病の情報交換は患者会でされていましたが、現在はSNSでも気軽に情報交換する事ができます。私もSNSを利用し、自分たちが知らなかったり、選択しなかった治療法について勉強させてもらっています。また、治療法だけでなく普段の生活や教育環境での知識やヒントも得る事ができます。患者数が少なく直接お会い出来る機会が少ないので、同じ病気と闘う仲間を身近に感じられるのはとても心強く励みとなります。
子供のことなのでプライバシーには十分配慮しながら、SNSを利用した血友病の情報交換も今後ますます主流になっていくのではないでしょうか。
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