血友病の保因者について学びましょう。

血友病の保因者について学びましょう。

「血友病の保因者」について皆さんはご存知ですか?
血友病は遺伝性疾患のため、血友病のご家族を持たれる女性は保因者と深く関係してきます。

保因者は症状が分かりにくいため日常に負担を感じていても診察に至ることが少ないですが、近年、医療の面でも血友病保因者について注目されてきています。この機会に、保因者について学び自分自身の体と向き合ってみませんか?




血友病の保因者とは?

 

「血友病の保因者」とは、2本あるX染色体のうちのどちらか1本に血友病の原因となる遺伝子を持っている女性のことで、もう一方の正常なX染色体が変異のあるX染色体を補ってくれるため、男性の血友病のような症状は見られません。

 

血友病保因者は約1〜3万人存在すると考えられていますが、その多くは、自分が保因者であることを知らず日常に負担があってもそれを当たり前に感じ生活しているようです(私もその一人でした)。

 

確定保因者と推定保因者について

 

保因者は「確定保因者」「推定保因者」に分けられます。自分が確定保因者であるかどうかは、まず家系図から判断していきます。

 

確定保因者

「確定保因者」とは保因者であることが確定しているということです。確定保因者であることは以下のような事柄から判断します。

  1. 父親が血友病患者である(血友病の原因となるX染色体を必ず受け継ぐので「確定保因者」となります)
  2. 血友病の子供を2人以上出産した
  3. 血友病の兄弟を持ち、尚且つ、生まれてきた男の子が血友病だった

 

推定保因者

保因者であると確定していないが、保因者である可能性があることを「推定保因者」と呼びます。推定保因者は以下のような事柄から判断します。

  1. 家系に血友病患者がいる
  2. 家系に血友病患者はいないが、生まれてきた男の子が血友病だった

 

また、「推定保因者」から生まれてきた女の子も「推定保因者」となります。

私は家系に血友病患者はいないと考えられる上、息子が血友病なので「推定保因者」と呼ばれます。「推定保因者」は「保因者診断」によって保因者かどうか調べることができます。私も、次の出産をどうするか考えるために保因者診断を受けました。

 

【保因者診断について】の記事はこちら

 



血友病保因者の症状

 

・過多月経
・産後の出血
・手術時、術後の出血
・鼻血が出やすい
・青あざができやすい
・抜歯後の出血

 

上記の症状が血友病保因者には診られますが、「異常だ」と感じる出血を経験することはほとんどないので、男性の血友病のように凝固因子製剤を投与することは滅多にありません。

ただし、大きなケガ・手術時・分娩時・分娩後には出血のリスクが高いため凝固因子製剤の投与が必要になることもあります。

 

血友病保因者は症状を自覚しにくい?

 

血友病保因者の症状はどうして自覚しにくいのでしょうか?私の場合、血友病家族歴がない上に活発に運動してきました。活発に運動していればアザができるのは当たり前で、「知らない間にアザがあるな?」と思っても痛くなければ酷くなることもありません。

血友病保因者の代表的な症状とされる「月経過多」ですが、他人と比べたことなんてありませんよね?月経について他人と比べるのは腹痛や腰への負担についてぐらいで、長年同じ感覚で向き合ってますから、それを当たり前に感じてしまいます。「少し長引くなぁ」なんて思っても毎月ではないので、そのままスルーしてしまいます^^;

 

このように、保因者としての負担を感じながらもそれを日常と捉える人が多く、そういった点から医療的にも保因者はあまり重要視されていませんでした。しかし近年、保因者に向けられる目は大きく変化しています。

 

血友病の保因者への関心

 

今まで医療者の中でも関心の低かった血友病保因者ですが、血友病保因者に向けられる目は大きく変化してきています。

 

血友病保因者の凝固因子活性は約50%とされていますが、2つのX染色体がうまく働かないことも多いため、実際には凝固因子活性が10%未満という保因者の珍しくないそうです。これは、男性の血友病軽度に当たる活性値と同じです。

 

また、保因者が抱える不慮の事故や手術時、出産時の大きな出血リスク日常にある保因者が原因で起こる出血は生活の質(QOL)を低下させているとされ、保因者ではなく「軽症女性血友病」と名前を変えるべきだという議論も起こっているようです。