[Web公開セミナー2019]〜全国のお母さんと確認したい血友病治療〜に参加しました。

[Web公開セミナー2019]〜全国のお母さんと確認したい血友病治療〜に参加しました。

皆さんは『WEB公開セミナー』をご存知ですか?
私も患者会の方から情報をいただき、今回初めて参加させて頂きました。

血友病のことで勉強する際に必ず利用させて頂きお世話になっている、血友病情報サイト「ヘモフィリアステーション」。

こちらの「ヘモフィリアステーション」にて、毎年4月17日の世界血友病デーに合わせ血友病の情報をインターネットで公開されています。

今回のテーマは「全国のお母さんと確認したい血友病治療」でした。
約1時間のセミナーの中で、私が気になった項目・皆さんと共有したいと感じた項目についてまとめてみました。

もっと詳しく知りたいと興味を持たれた方は、「ヘモフィリアステーション」にて過去のWEBセミナーも観覧可能なようなので、是非ご覧になってみてはいかがでしょうか^^




はじめに

今回のセミナーでは3人の先生方が出演され、アンケートを元に血友病に関する様々なアドバイスや情報を下さいました。

大阪医療センター感染症内科/西田恭治先生
東京医科大学臨床検査医学分野/天野景裕先生
久留米大学病院小児科/松尾陽子先生
(順不同)

今回の記事は、私の気になった事・皆さんと共有したいなと感じたアンケート内容と先生方のコメントを失礼ながら抜粋させて頂き、最後に今回のWEBセミナーを受けた私の感想を記載しております。

 

血友病保因者検診の提唱から5年経過して/西田恭治先生

まずセミナーの冒頭に、保因者に関するお話がありました。

私は現在推定保因者で、保因者診断の結果を待っている状況ですが、診断結果がどちらであろうと血友病と関わるものとして、保因者については学んでいくべきことだと考えています。


以下、大阪医療センター感染症内科/西田恭治先生

「5年前からこの公開セミナーにて“保因者検診の提唱”を行っていますが、当時からアクセス数が多かったことから保因者への関心は益々高まっているのかなと感じます。
この時に、なぜ保因者・女性への配慮が必要なのかをお話しさせて頂きました。」

 

【保因者診断を進める理由】
・血友病患者のみならず、保因者にも出血のリスクがあるということの認識。
・出産時に産まれてきた子供が血友病だった場合、その分娩を安全に行うための方法があるということの提唱
・現在の血友病治療の現況を多くの保因者に理解してもらいたい
【多くの保因者が抱える問題】
・遺伝病を抱えていることへの後ろめたさを感じている方は少なくない
・相談窓口が乏しい
・月経過多で婦人科にかかるが、原因不明だと診断され悩む
 →そこからもたらされる貧血で悩みメンタル面で辛い想いをされている方も多い

「このような悩みを誰も解消してくれないという現実をなくすために保因者検診を提唱してきました。
これまでの活動の甲斐もあり、保因者への認識は徐々に広がっています。」

 

【広がる保因者への認識】
・近年では血友病フォーラムやヘモフィリアセミナー、一般誌でも保因者検診について取り上げられるように。
・2017年の世界血友病デーでは、日本のみならず世界でも「女性に対する配慮を高めよう」とスローガンが掲げられる。
 →これにより、”血友病の周産期管理”つまり妊娠から出産にかけての配慮に対するガイドラインが作成。
・血友病全体に対する教科書・参考書にも、従来なかった”保因者のケア”という項目が新たに追加。

「これは血友病医療従事者の「保因者の抱える問題」に対する意識を高め、血友病診療の初心者に対するマニュアルにも「保因者ケア」という項目が付け加えられました。
また、一般の方にも保因者に関する資料が数多く提供されるようにもなりました。」

 

「しかし、どうしても低年齢の女の子へメッセージを伝える方法に至難していましたが、今回アニメーションで分かりやすい啓発本を提唱。
海外でも認められ多言語化されることが決まりました。」

 

「保因者検診で目指すことは、すべての保因者が適切な自己決定をするお手伝いです。
医療者もその必要性を築き始めています。」

 

血友病に関わるお母さんを対象にしたアンケート

今回は、血友病・確定保因者・推定保因者のお子さまを持つお母さんや、お母さん自身が確定保因者・推定保因者と、様々なかたちで血友病に関わっているお母さんを対象にしたアンケートを実施。

そのアンケートをもとに、お母さん方がどんなことで悩み、考えているのかを予想し考えようという内容でした。
アンケートは全15問ありましたが、その中で気になった項目をまとめてみました。

Q, 現在使用中の血液製剤は?

A, 標準型 【34名】 / 半減期延長型 【21名】 / 皮下注製剤 【13名】

[先生方の見解]
「皮下注製剤はまだ使用されて間もないことも理由にありますが、半減期延長型が主流になっていく中で、まだまだ標準型の使用が多いなと感じました。」

 

Q, 誰が注射している?

A, 母親 【28名】 / 患者本人 【24名】 / 母親と夫 【12名】 / 夫のみ 【0名】 / 祖父母 【0名】

[先生方の見解]
「やはり、注射は主にお母さんが行っていますね。
もっともっとお父さんと協力して一緒に治療できる環境が増えればいいなと感じます。」

 

Q, 血友病患者を持つ母親としての大きな悩みはなんですか(複数回答)

A, 子供の健康 【58名】 / 学業就職 【43名】 / 恋愛結婚 【50名】 / 子供の老後 【25名】

[先生方の見解]
「恋愛結婚を気にされている方が多いことに驚きました。
遺伝病という面で将来への不安を抱えているのでしょう。
また子供の健康については、健康がなければ他の項目も満たされませんので多くのお母さんが抱える悩みですね。
またこれは、健常者のお母さんも同じように思う悩み事ですよ。」

 

Q, 出血リスクのある活動に対する方針

【1位】出血リスクの強いものだけを避ける  /  【2位】本人のやりたいようにやらせる  /  【3位】出血リスクのある活動はさせない 

[先生方の見解]
「”出血リスクの高いものは避ける”という方針は模範的回答ですが、本人のやりたいようにやらせるという方針が増えてきているのは、定期補充療法が浸透している証拠です。
海外でもスポーツの世界で活躍している選手もいらっしゃいますし、きちんと治療し事前準備をして様々なことにチャレンジできる環境を作っていけたらいいですね。」

 

Q, お子さまが血友病であることを、周囲のどこまで知らせていますか(複数回答)

【1位】学校職場関係者まで / 【2位】家族のみ  / 【3位】親戚まで  /  【4位】子供の友人  / 【5位】自分の友人 

[先生方の見解]
「”子供の友人に知らせるべきなのか”という相談はよくありますが、定期補充療法の定着もあり、”あえて知らせない”という選択も提案しています。病気は患者本人のプライバシーでもあるので、患者本人の意思を尊重すべきだと思います。」

 

Q, 確定・推定保因者の娘さんを持つ母親として最も悩んでいることはなんですか

【1位】 将来の結婚・出産 / 【2位】 いつ保因者であることを話すか

[先生方の見解]
「血友病治療は進歩しているが、遺伝病だという事実は変わらないので将来への不安が出てくるのでしょう。」

 

Q, 保因者であることをいつ頃伝えますか

【1位】 小学校高学年の初潮について説明する時 / 【2位】 恋人ができた時 / 【3位】 一人暮らしを始めた時

[先生方の見解]
「初潮について説明するのが一番のタイミングかなと感じているようですね。
早くに理解するのが望ましいと思いますが、”言いそびれてしまった”というパターンも少なくないようです。」

 

Q, 子供に保因者であることを誰が説明しますか

【1位】 母親 / 【2位】 母親と夫一緒に / 【3位】 医療従事者

[先生方の見解]
「なかなか言えないという方が、医療関係者にお願いされるようです。
同性同士だけで話したい事柄かもしれませんね。」

 

Q, 結婚する時に保因者であることを知っていましたか

A, はい 【13名】 / いいえ 【55名】

[先生方の見解]
「10年前に調査した時にも、”家族歴に血友病患者がいながらも自分が保因者であることを知らない”という方が過半数を占めていたことに驚きました。」

 

Q, ご自身はこれまで、出血に関して気にされたことはありますか

A, 気にしたことがない 【44名】 / たまにあるがそれほど気ならない 【18名】 / 出血がよく見られ気にしている 【5名】 / 止血治療を行っている 【2名】

[先生方の見解]
「保因者の出血に関して細かく聞いていくと、いくつか当てはまるけれど本人はそれを認識していないため” 気にしていない “という回答が多くなっているように思います。
月経過多であっても、本人にとってはそれが普通。” 他人と比べることもないのでわからない “と回答されることがよくあります。」

 

*上記[先生方の見解]につきましては、今回のセミナーに出演されていた先生方のお言葉を抜粋させて頂きました。

大阪医療センター感染症内科/西田恭治先生
東京医科大学臨床検査医学分野/天野景裕先生
久留米大学病院小児科/松尾陽子先生
(順不同)



今回のWEB公開セミナーに対する先生方のご意見

「血友病患者の周りにはだいたい1.5~3倍くらいの保因者の女性がいると言われています。」

「保因者に関しては、遺伝病であることの他に、保因者であることにより何かしらの影響があるかもしれない。
それを病気とするのかは難しい議論ではありますが、保因者である女性たちへのケアの必要性を考え、サポートしていきたいと思います。」

「難しい質問もありましたが、悩むことは大切なことなので、その悩みを医療従事者にも相談して頂けたらと感じます。」

 

今回のWEBセミナーを受けて私が感じたこと

血友病に関しては、” 子供の身体に対する質問・出血時や将来への不安に対する質問 “ が多く、保因者に関しては、” いつ伝えるのか・誰が伝えるのか “ といった、メンタル面に配慮した質問が多かったなと感じました。

また、母親自身に対する質問に関しては意外だなと感じました。

私は推定保因者で、家系に血友病患者はいませんし、月経過多を感じたこともありません。
これにより、息子は弧発例である可能性も考えられるわけですが、弧発例も稀なので、血友病と関わる方の多くは「自身が保因者であることを知っている」という方のほうが多いと思っていました。

今回のアンケートでも、” 娘に保因者であることを知らせない ” と回答された方が1名いらっしゃったようですが、知らせないことが娘の幸せだという考え方をされたのでしょうか。
その選択の背景にはそれぞれの環境があると思うので、どの選択が正しいなんて答えはないと思います。

たとえ保因者であることを伝えても、保因者自身の体のケアはうまくいっても、結婚や恋愛に臆病になったりとメンタル面で多くの悩みを抱えるかもしれません。

保因者にとって、恋愛や結婚など将来へ繋がることへの不安は大きな悩みであり、とても難しい選択だと思います。
しかし、それを少しでも解消させてくれるのが、現在の血友病治療ではないでしょうか。

私も自身が確定保因者だと診断されたら、” 出産には挑まない ” 選択をしようと考えています。
性別はどちらにせよ、やはり遺伝病であること考えてしまいます。

でも、息子に血友病を持たせてしまったことを申し訳ないと感じても、息子を産んだことへの後悔や、今の生活を苦痛に思ったり不幸だと感じたことは一度もありません。

昔は難しかった血友病治療も急速に発展し、辛い治療は続きますが健常者と変わらない生活ができるのが現在の血友病治療です。

このような事を考慮すれば2度目の出産も挑戦できるのかもしれませんが・・・。

また、保因者でなかったとしても出産への不安は拭えません。

それぞれの環境・考え方で様々な悩みや選択があると思います。
一人で悩んでしまいがちな問題ではありますが、やはり誰かに相談することが一番ではないでしょうか。

先生方がおっしゃっていたように、保因者へのケアが世界的に広がっています。

医療的治療はもちろんですが、血友病と関わる私たちが保因者について発信していくことも、保因者への関心を高め、悩みを抱える女性の助けとなれるかもしれません。