ヘムライブラ微粒子混入について思うこと

ヘムライブラ微粒子混入について思うこと

すでにご存知の方が多いかと思いますが、2019年10月中旬、血友病治療薬ヘムライブラに微粒子が混入していたという情報を受けました。

今回は、この『ヘムライブラ微粒子混入』について少しお話ししていきます。




ヘムライブラ使用を検討していた時のことでした

 

血液凝固第Ⅷ因子(血友病A)機能代替製剤「ヘムライブラ」は、2018年12月にインヒビター非保有者も使用可能となり、息子もヘムライブラ使用を意識するようになりました。

ヘムライブラの大きな利点は、最低でも週1回の皮下投与で良いことで、幼く血管の乏しい息子にとっては身体的・精神的負担を軽減してくれる優れた薬だと考えています。

 

しかし、ヘムライブラの止血効果が息子のような活発な時期の子供に適しているのか?出血した際にはどのように処置を行えばいいのか?当時は、日が浅く、特に2歳という低年齢の子供のデータはないに等しかったこと、当時の第Ⅷ因子製剤で問題なく生活できていたことから使用していませんでした。

 

 

それから月日が経つごとにヘムライブラ使用者は増え、同時にヘムライブラの評判も上がっていきました。

2019年9月に京都で行われた「全国へモフィリアフォーラム」では、幼稚園〜小学校の授業で行われる運動は問題なく参加できるというデータも発表されました。ヘムライブラを使用されている成人患者様の中には、驚くほど出血が見られないので「どの程度の運動で出血が起こるのか実験している」という方がいらっしゃるほど、ヘムライブラの止血効果は認められていきました。

 

ここまで多くの方が止血効果を感じているなら『ぜひ使用したい!!』と主治医にヘムライブラ使用をお願いに上がろうとしていたその時に・・・このヘムライブラ微粒子混入の問題が上がってきたのです。

 

ヘムライブラ微粒子混入とは?

 

今回のヘムライブラ微粒子混入について、中外製薬のHPで患者様向けに発表がされました。そちらの内容と私の疑問を交えQ&A方式で簡単にまとめてみました。(以下、2019年10月21日付)


 

Q ) 今回混入していた微粒子って?
A ) PDMS(ポリジメチルシロキサン)

 

Q ) PDMSってなに?
A ) PDMSはシリコーンの一種で、医薬品・食品業界など様々な場面で使用されていて、食品業界では、チキンナゲットやハッシュポテトなどの揚げ物そのものに添加することもあるようです。

 

Q ) PDMSが人体に及ぼす影響は?
A )シリコーンは大量に体内に入ると人体に悪影響を及ぼすとされていますが、今回混入していたPDMSは、 1日体重1kgあたり1.5mgを毎日経口摂取しても人体に影響がないと考えられています。
一方、ヘムライブラの1mlバイアル中のシリコーンは、おおよそ0.0001~0.0003mgであり、1週間分のシリコーン量は、1日あたりの経口摂取許容量の150万~50万分の1の量となります。皮下投与経路での許容摂取量は明確になっていないものの、経口での1日当たりに許容される摂取量を参照し、十分に許容される量と考えております。

 

Q ) PDMSが混入しているヘムライブラを使用し続けても大丈夫なの?
A ) 経口投与において、PDMSの約80%は糞中に排出されますが、吸収された約20%は直接呼気中に、または代謝されて尿中に排泄されることが報告されています。その為、皮下投与においても血中へ移行した後は同様に体外へ排泄されると考えられ、生体内で蓄積される可能性は極めて低いと考えております。

 

Q ) 微粒子混入はいつから?
A ) 臨床試験実施時より製剤中に含まれていたとされています。

 

Q ) どのヘムライブラに混入しているの?
A ) 全ての製剤ロットにわずかに存在すると考えています。

 

Q ) どうして気づかなかったの?
A ) 目視できるかできないか程度の半透明な小さいサイズの微粒子であることから、早期発見に至りませんでした。

 

Q ) 現在ヘムライブラを使用している方はどう対応すればいいの?
A ) 現在お手持ちの製剤は引き続きご使用いただけると考えておりますが、今回の内容に関わらず、外観に異常を認めた場合にはご使用を控えていただき、医療機関にご連絡をお願い致します。




私たちは今回の問題をどう受け入れるべきなのか?

 

今回の問題に対する様々なデータを検討し、『ヘムライブラの有用性と危険性の評価はこれまでと変わりないと決定し製造は継続、患者の使用が可能』という結果に至っていますが、中には、今回の問題が完全に解決するまでヘムライブラ新規患者については保留したという国もあるようです。

私たちがお世話になっている病院においても、ヘムライブラ使用者については使用を継続。ヘムライブラの使用を検討している患者に対しては、今回の問題を説明し使用の判断を仰ぐというかたちになっているようです。

 

 

頼りにしている使用中の薬に問題が起きたが、医師は「使用継続可能」と判断。使用患者も多くいれば信頼して使用継続の判断をするのは当然です。しかし、問題が解決していない薬を打つたびに不安を覚えてしまう精神的負担は大きいかもしれません。

 

また、子供に少しでも良い環境で生活させてあげたいと思い、評価の上がってきたヘムライブラに変更しようとしていた矢先、問題が起きてしまった。まさしく今回の私たちのパターンですが、ある程度先を見越しスケジュールを組んで検討していただけに、どうしていいのか分からなくなってしまいました。

使用を延期するのか?延期したとしてもいつまで待てばいいのか?ヘムライブラを使用したいという気持ちが強かっただけに、今回の微粒子混入は私たちにとっても非常に大きな問題となってしまいました。

 

ヘムライブラ使用に対する私たちの判断

 

この問題が出てから主治医と相談を繰り返し、ヘムライブラ導入を決めました。

私たちがヘムライブラを使用したい大きな理由が「幼稚園入園」です。現在の第Ⅷ因子製剤でも問題なく私生活を送っていますが、製剤の効果が減少してきた頃には活動を制限しているのは事実です。

 

私は幼稚園探しの中で「怪我は日常茶飯事」であることを全ての園で言われてきました。中には頭を縫うほどの大怪我もあるようで、それをヘムライブラで補うことは不可能かもしれません。ですが、関節に支障が起きてしまうような危険日を作らず、少しでも安心していつもみんなと同じように遊べる環境を作ってあげたいという想いがありました。

これまでの血友病患者様は毎日治療を行って体を守ってきたのですから、私たちにもその方法は可能かもしれません。しかし、贅沢ではありますが少しでも息子の身体的・精神的負担を減らしてあげたいというのが私たちの正直な気持ちです。

 

息子を診て下さっている先生方は今回の件に関して、「すぐに解決するような問題ではないが、使用に関しては考えてもいい」という事で、年明けからヘムライブラ導入へと進めていくことに決定しました。

 

また今回の問題で、血友病に関わるたくさんの方が様々な場所で問題解決に向けて活動して下さっています。本当に感謝致します。
またヘムライブラ使用の様子をこちらで紹介させて下さい(^^)