血友病と運動の関係性とは?しっかりと準備をして積極的にスポーツに取り組もう。

血友病と運動の関係性とは?しっかりと準備をして積極的にスポーツに取り組もう。

運動は出血のリスクが伴うため、1970年代まで血友病患者さまにスポーツは推進されていませんでした。

しかし、近年の血友病治療の発展により、“小児期(0~12歳頃)における体育の授業には全て参加している”と回答される患者さまが増え、これまでの考え方とは逆に、『積極的にスポーツに取り組み体を鍛え、出血のしにくい体を作りましょう』と血友病患者さまにもスポーツを推進されています。

今回は、『血友病患者さまに推進されるスポーツ・出血のリスクが伴う可能性があるとされるスポーツの利点とリスク』をまとめてみました。

大人になっても継続して続けられるスポーツも多くあるので、子供の選択したスポーツがどの程度の運動量とリスクがあるのか、基本的な情報を学び子供のサポートをしてあげましょう。




血友病患者さまに安全で推進されるスポーツとは?

血友病に推進されるスポーツといえば『水泳』を思い浮かべませんか?実際に「とりあえず水泳から始めてみよう!」と取り組まれる方も多いようです。
以下では、”関節への負担が少ない”などの理由から、積極的に取り組むことを推進されているスポーツを紹介していきます。

 

推進されているスポーツ

・水泳
・アクアビクス
・ゴルフ
・アーチェリー(弓道)
・ウォーキング など

 

水泳・アクアビクスは、浮力を利用した体への負担が少ない運動で、有酸素運動と筋力トレーニングの両方を兼ね備えています。
水中では陸上のおよそ10分の1の負荷で運動することができ、血友病で懸念される関節部へのリスクを減らしてくれるので、無理なく運動を続けることができます。
ただし、プールサイドでの転倒は危険を伴うので注意しましょう

 

ゴルフは「おじさんのスポーツ」というイメージがありましたが、近年では幼少期から取り組む子も少なくありません。
体への負荷は少なく、ゴルフコースを歩けば自然とウォーキングの効果を得られます。

 

アーチェリーは、体への負荷が少なく、運動の苦手な方でも取り組みやすいスポーツです。
こちらも近年では小さなお子さんが始められるケースもたくさんあるようで、集中力のいるアーチェリーは精神面の向上にも十分期待できるという嬉しい面もあるようです。

 

ウォーキングは、老若男女、場所を問わず実践できる手頃な運動です。
ジョギングやランニングと異なり、体への負荷が軽い上に自分のペースで取り組むことができます。
どのスポーツに挑戦すればいいのか悩んでいる方は、ウォークングから始めてみるのもいいかもしれません。

 

血友病患者さまに中程度〜高度のリスクが伴うスポーツとは?

体がぶつかり合ったり、体に大きな負荷がかかる、誰にとっても危険の伴うスポーツは、血友病患者さまにとって出血のリスクがあまりにも高く避けた方が良いとされています。

また、中程度のリスクを伴うスポーツでも頭部を強打する可能性のあるプレー避けるなどの注意していかなければなりません。

 

中程度のリスクを伴うスポーツ

・ジョギング
・サイクリング
・ダンス
・ヨガ
・スキー
・筋肉トレーニング

 

ジョギングはウォーキング同様、場所を選ばず簡単に取り組めるスポーツです。体調を見ながら、ゆっくり5〜10分程度を目安に取り組みましょう。スピードを上げ過ぎたり長時間にわたる過度なジョギングは体に負荷がかかり、関節を痛める原因となってしまいます。

 

サイクリングは関節への負荷も少なく、運動に慣れていない方でも無理なく取り組むことができるスポーツです。
サイクリング用の自転車では、適切な乗用姿勢を取れば膝などへの負荷はほとんど掛からないとされています。
しかし、接触や転倒時の衝撃は非常に強いため、常に安全面に配慮し、ヘルメットやサポーターの装着が必要となります。

 

ダンスは、平成20年中学校保健体育において必須科目となり、近年のダンスブームにより習い事として取り組んでいる子供も多くいます。
中学校で習うレベルのダンスは特に問題なく取り組めるかと思いますが、ダンスにも様々なジャンルがあり、ジャンルや技によっては頭部や関節への出血リスクを伴うことがあります。

 

ヨガは心臓と血管を健康にし、柔軟性やバランス感覚を高めたりストレスを解消してくれる、心身ともに良い効果をもたらしてくれるスポーツです。ゆったりとしたイメージの強いスポーツですが、実は体には大きな負担がかかっています。
正しい姿勢が取れなければ、それはただ体に負荷をかけているだけで、無理な体勢は関節を痛める原因となります。
ヨガに取り組みたい方は、少人数制のゆったりしたプログラムのものを選んだ方がいいかもしれません。

 

スキーは冬の代表的なスポーツで、学校の行事や友達との旅行で行く方も多いかと思います。スキーは下半身だけの運動のように見えますが、全身の筋肉を使いバランス能力の向上にもつながっています。
しかし、不安定な雪面を踏ん張りながら滑るには、膝や股関節へ負担が掛かります。体の調子を確認しながら無理な運動は避けましょう。また、転倒時には足を捻ったり、頭部強打・骨折のリスクがあることも十分に理解しておきましょう。

 

筋肉トレーニングは自宅でも手軽にすることが可能で、正しい知識で継続的に取り組めば必ず成果が現れるので、理想の体が作れるだけでなく、忍耐力や自己管理の向上が図れるとされています。
ただし、無理な負荷は関節を痛める原因になってしまいます。自分にあった負荷設定を行い、無理のない負荷・回数で2日に1回のペースで行なう事が望ましいとされています。



中程度〜高度のリスクを伴うスポーツ

・野球
・サッカー
・バスケットボール
・バレーボール
・体操競技
・武道(空手・柔道・剣道)

小中高の体育の授業や、部活動で選択されるスポーツが多く並びましたね。

 

野球・サッカー・バスケットボール・バレーボールはメジャーな集団競技で、友達と誘い合って取り組むことも多くあるかと思います。チームで目標に向かって行なう日々の練習や試合は社会性を育て、仲間との絆を作りあげてくれます。みんなが頑張っているからと自分の体に無理な負担をかけてしまわないよう、違和感を感じたらしっかり休める環境を作りましょう。また、集団競技で起こり得る接触には十分注意をしましょう。

 

体操競技も近年人気のスポーツですね。床・あん馬・つり輪・跳馬・平均台・平行棒・鉄棒など種目は様々です。オリンピックに出場される体操選手を見てみると皆さんムキムキ^^競技を行うための激しい筋肉トレーニングは欠かせませんし、着地時の衝撃は関節へ大きな衝撃を与えます。一見負荷のなさそうなトランポリンも膝への衝撃は想像以上にあるとされています。筋肉やバランス感覚をある程度養ってから挑戦した方が良いかもしれません。

 

武道も小中高の体育や部活動で選択されるスポーツの一つですが、体をぶつけ合うスポーツのためお勧めのスポーツとは言えません柔道においては、中学校の必修科目となっていて、授業を休ませるべきなのか悩まれる方も多いと思います。個人の出血の程度や主治医の指示に従い、柔道であれば受け身の練習、剣道であれば型や素振り程度に留めておき、危険を伴う実践は避けた方が無難かもしれません。
また、武道で行われる正座などの基本姿勢も、状況によっては体に大きな負担となります。礼法だからと見学時に長時間の正座を行わないように注意しましょう。

 

高度のリスクを伴うスポーツ

・ボクシング
・ラグビー
・アメリカンフットボール
・レスリング
・重量挙げ
・ダイビング競技

高度のリスクを伴うスポーツは、誰にとっても危険の伴うスポーツです。
血友病患者さまにとっても出血のリスクは非常に高く、お勧めのできないスポーツです。

 

ボクシング・ラグビー・アメリカンフットボール・レスリングなどの強く体がぶつかり合うスポーツは、誰にとっても出血のリスクが高く、最悪死に至るケースもあります。血友病患者さまにはオススメされない代表的なスポーツです。

 

重量挙げは完全なパワースポーツで、日々の練習では激しい筋肉トレーニングが行われ関節を強く痛める原因となります。また競技で使用されるバーベルは最高で100㎏以上あり、肘が内側に曲がってしまったりバーベルの下敷きになってしまったケースもあります。

 

ダイビング競技は高所から水中へ飛び込む際の技を競い合うスポーツで、水泳と同じ水を使用したスポーツですが、出血へのリスクは正反対にあります。入水時の姿勢が正しくなければ水面に体を強打してしまい、最悪死の危険が伴うスポーツです。

まとめ

 

子供さんの好きなスポーツや、今後挑戦するであろうスポーツにはどのような面で出血のリスクがありましたか?

血友病治療の発展で、血友病患者さまに禁止されるスポーツというのはありません。
しかし、出血の程度には個人差があるので、スポーツに挑戦する際は主治医に一度相談し、補充の仕方や、避けた方が良い運動がないか確認しておきましょう。

予備的補充や定期補充をしっかりと行い、安全にスポーツに取り組める環境を作れば、むしろ出血しにくい体を作り上げ、人間関係・精神力・社会性など大人になってから役立つ多くのものを得ることができるでしょう。