血友病の輸注記録はなぜ必要なのか?輸注記録の必要性について考えてみた

血友病の輸注記録はなぜ必要なのか?輸注記録の必要性について考えてみた

『ゼロブリーディング(出血ゼロ)』を目指した近年の血友病治療で「輸注記録は重要」だとされていますが、皆さんは輸注記録をしっかり付けられていますか?それを医師とも確認しフィードバックできていますか?

 

今回は輸注記録の必要性について、先日診察の際に頂いた『 Forward No,6 ( あらためて輸注記録を考える ) 』をもとに考えていきます。

 





輸注記録とは?

 

輸注記録とは、患者さまが自己輸注を管理するための大切なツールで、私たちは息子の治療が始まった時から輸注記録について指導があり、『輸注記録を習慣付けること』を徹底されてきました。家庭輸注が導入され自宅で注射するようになってからは、通院のたびに主治医に輸注手帳を提出し出血の有無を確認することが決まりとなっています。

 

現在は、輸注記録の大切さを伝え徹底されている病院が多くありますが、その背景には「血友病患者の34%しか輸注記録を付けていない」というデータが過去にあったようです。

 

 

輸注記録を付けている患者さんの割合

 

日本血栓止血学会の「血友病家庭注射療法のガイドライン( 2003 )」には、患者や家族の遵守事項として「治療経過や製剤の家庭内在庫状況を記録し病院に定期的に提出すること」との記載があります。しかしながら、輸注記録を付けていない患者さまが多くいるということが報告がされ、各病院で様々な工夫を凝らし100%の提出を目指しているそうです。

 

それでも、自己注射に切り替わったタイミングや、進学や就職などのライフイベントをきっかけに輸注記録が途切れてしまう患者さまもいらっしゃるようです。

 

中には受診日に待合室でまとめて輸注記録を付けている方もいらっしゃるようですが、輸注記録は患者さまと医者をつなぐ大切なツールです。主治医に指示されているから行う事務的なものではなく、今一度、患者と家族自身が輸注記録の意味について学ぶ必要があるかもしれません。

 

 

輸注記録を見直しましょう

 

皆さんはどのように輸注記録を付けていますか?
「日付・時間・ロット番号の記入・定期or出血時」は必須事項かと思いますが、これだけでいいのでしょうか?

 

輸注記録の質をあげることは、出血を防ぐことにも繋がっていくと私は考えます。

私は家庭輸注へ移行したことをきっかけに、息子がいつもはしない怪我をした際、それを輸注記録に記載することにしました。怪我をした様子・部位・その後の症状。もちろん、打った部位によっては主治医に連絡相談し、出血時補充をするかどうかの判断をもらいますが、主治医に相談しなくても大丈夫かな?と判断した怪我でも、気になったことは記載するようにしました。

 

これをもって月一回の受診日に主治医とフィードバックし、「この時は第八因子活性がこのくらいあるもんね」とか「これくらいの怪我だったら大丈夫だね」と気になったことの伝え忘れを防ぎ、改めてこの判断で良かったんだと自信にも繋げることができました。

 

実際、輸注記録がしっかり付けられていなかった為に起こるトラブルもあるようです。

 

 

輸注記録を付けていないことで起きるトラブル

 

まず、輸注記録がないと注射のタイミングや製剤の投与量・投与間隔が分からないため、患者さまへのフィードバックが行えません。輸注記録は出血の頻度や投与量を確認するのはもちろん、新しい製剤へ変更する際の基準にもなるため、とても重要なものだと言えます。

 

また、どのタイミングで出血をしたのかという情報は自分のライフスタイルを客観的に見直すきっかけともなります。それは出血を防ぐことにも繋がるので、起きたイベントをそのまま記載することも大切なようです。

 




輸注記録のメリット

 

ゼロブリーディング(出血ゼロ)を目指す時代だからこそ、輸注記録は大切です!!

 

【 輸注記録のメリット 】

  1. 患者さんが自身の出血する状況を振り返ることで、出血しやすい状況・曜日などが確認できます。
  2. 自分の行動パターンや出血状況を分析することで、自身で注意すべきことがわかります。
  3. 輸注記録をもとに医師と相談して、ライフスタイルにあった輸注スケジュールを決めることができます。
  4. 適切な輸注により出血ゼロに近づけることができ、その結果、将来にわたってQOL(生活の質)を保つことにつながります。 

『 Forward No,6 ( あらためて輸注記録を考える ) 』より。

 

 

輸注記録は家庭でつけるカルテです

 

輸注記録は医師が診察内容を記載するカルテと同様のものだと考えられています。

 

現在、家庭輸注は一般的なものとなっていますが、これは1983年に認可された特別な治療法で、その為に守らなければならない事項がいくつかあります。その一つが輸注記録で、輸注や症状を輸注記録に記載し提出しなければなりません。また医師にも、家庭輸注が適切に行われているか管理する責任があります。

 

聖マリアンナ医科大学病院では「輸注記録を記入しないとお薬は出ませんよ」と輸注記録提出を呼びかけているそうですが、患者自身も「自分の体を守る大切なツールだ」と重要視できれば、自然と出血を防ぐことへとつながっていくのではないでしょうか?

 

 

輸注記録を習慣づけましょう

 

輸注や出血をその都度記載することで輸注記録の質が上がります。自分が理解し説明できるように記載すれば、箇条書きでもいいと思います。あまり苦にならないように、日記のような感覚で記載していけたら理想的ですね。

 

また、私たちのように現在お子様が幼く家族が輸注記録を付けている場合、お子様の成長に合わせて「親が記載しているのを見せる」「ロットシールを貼らせてみる」「日ずけを書かせる」など輸注記録が当たり前にあることを認識させ、出血時には「今度先生に相談できるように輸注記録に書いとくね」などと使用の仕方について自然と身につけていけたらいいですね。

 

「自己注射や思春期のタイミングで輸注記録を書かない」なんてこともあるかもしれませんが、その時は、輸注や出血のタイミングでそーっと気にかけてあげたいですね。

 

 

輸注記録の様々なツール

 

輸注記録表に定められたのもはなく、患者さま自身が記入しやすく医師が確認できればどんなものでも構わないようです。私は、製薬会社が配っているものを主治医から頂戴し使用しています。現状、私たちには記載が必要ないと感じる箇所が多いのでもっとスッキリできないかなぁと考えていますが、輸注記録を付けやすくするためのツールが各社で作られているようです。

 

パソコン・スマホ派

 

【 パソコン・スマホ・携帯 】

  • インターネット環境 : 常にインターネットの接続が必要
  • 病院との情報共有 : メール送信・パソコンから印刷して持参
  • 定期補充の確認方法 : カレンダー確認・メールでお知らせなど
  • ツール例 : ゆちゅレコ・モバ録

 

【 スマホアプリ 】

  • インターネット環境 : インターネットの接続がない
  • 病院との情報共有 : メール送信
  • 定期補充の確認方法 : アラートでお知らせ
  • ツール例 : ユチュウ部マネージャー・Factor Track・モバ録

 

手書き派

 

【 ノート・手帳 】

  • インターネット環境 : インターネットの接続がない
  • 病院との情報共有 :持参・写真に撮ってメール送信
  • 定期補充の確認方法 : 持ち歩き・決まった時間に確認・目の付く所に置いておく
  • ツール例 : Hemophilia record 手帳・投与記録帳・ Hemophilia handbook・ Hemophilia Dairy・投与記録ノート

 

【 カレンダー 】

  • インターネット環境 : インターネットの接続がない
  • 病院との情報共有 :持参・写真に撮ってメール送信
  • 定期補充の確認方法 : 記入して冷蔵庫など目の付く所に貼って確認
  • ツール例 :輸注記録カレンダー




「ゆちゅレコ」「ユチュウ部マネージャー」の使用レビュー

 

手書き派の私は、パソコンやスマホアプリを利用したことがありませんが、ツイッターでフォローさせていただいている 井辻球人 様 がブログにて「輸注管理アプリの使用レビュー」を書かれています。

井辻様に許可を頂きましたので、URLを貼り付けておきます。是非ご覧ください。

 

【 Qちゃんの血友病エンタメ研究所 】輸注管理アプリを使用してみたの記事はこちらから→https://kyutoitsuji.amebaownd.com/posts/7451569

 

井辻様は、「血友病のエンタメ化」を目標に、ご自身の経験談や想いをブログに残し、血友病への理解を深めていこうと活動されています。ブログの中には、ご自身が血友病と向き合ってきた正直な想いやご家族への想い、井辻様のお母様へのインタビューなど、とても興味深い記事が多くあります。まだ幼い血友病の息子を育てる母親目線からも大変心に響くブログを書かれていますので、是非みなさんもご覧下さい^^

 

輸注記録でゼロブリーディングを目指しましょう

 

私はこれまで、「輸注記録も息子を守るための大切な治療の一部だ」と義務的に取り組んできましたが、今回、『 Forward No,6 ( あらためて輸注記録を考える ) 』を読み輸注記録の必要性を改めて学び、より一層理解を深めることができました。

現在の血友病治療を受けられている私たちは本当に恵まれた環境にあります。

この恵まれた環境を無駄にしないよう、今一度、輸注記録をはじめとする血友病治療の基本を学び、知識を深め、ゼロブリーディング(出血ゼロ)を一緒に目指していきましょう。