関節内出血と血友病性関節症とは?関節症を起こさないための知識を学び予防しよう。

関節内出血と血友病性関節症とは?関節症を起こさないための知識を学び予防しよう。

「出血ゼロ」を目指す現在の血友病治療の中で重要視している出血の一つである関節内出血

私たちも日々の生活の中で一番懸念している出血であり、どの程度で出血し、どのような症状が見られるのか。また、慢性化してしまう前にどのような点に注意して活動していけば良いのか考え悩んでいます。

今回は、『関節内出血』と関節内出血が慢性化して起きる『血友病性関節症』について一緒に学んでいきたいと思います。




関節内出血について

血友病は体の様々な部位で出血が起こり、その出血部位は年齢によって変化していきます。その中でも、幼少期〜大人まで見られる出血が「関節内出血」です。

関節内出血は、膝・肘・足首などで起こりやすく、出血すると痛み・腫れ・熱感などの症状が見られます。痛みを的確に伝えられない幼児でも、足を引きずっている・歩かないなど見た目に変化を感じることができるようです。

 

 

2歳半現在、息子にその症状は見られていませんが、少し立ち止まって膝を押さえ、その後すぐに走り出すという場面は何度かありました。その度に主治医に相談しましたが、それほど心配するものではないと説明を受けました。

出血を感じると「ムズムズする」と言う感覚になるそうで、息子はその状態だったのかもしれません。

 

体の状態をうまく伝えられない幼児の場合、歩行の様子に合わせて、入浴時やお風呂上りに左右の関節の太さに違いがないか熱感がないか確認してあげると良いそうです。

次に、痛みを感じた時、子どもに足を引きずるなどのいつもと違う様子が見られた時、どのように処置していけば良いのか見ていきましょう。



関節に違和感・痛みを感じた時どうすればいいの?

関節内出血は目に見えない出血のため、血液製剤でしか血を止めることができません。少しでも早く血を止めることが慢性化させないための大切な治療となります。

また違和感を感じた時、すぐに血液製剤を使用できない時は応急処置を行うことも大切です。

血友病治療における注射以外の応急処置【RICE】についてはこちら

 

また出血してしまった際はサポーターを使用するなどして、しばらく関節を保護し同じ部位で出血を繰り返さないようにすることがとても重要になるようです。

では、関節内出血はどんな時に起こるのか、出血を防ぐ方法と合わせて見ていきましょう。

どんな時に関節内で出血が起きるの?

関節内出血は激しい動き・衝撃によって起こります。特に幼児期に注意したいのが「高所からの飛び降りること」です。

 

子どもって高い所から飛び降りるの大好きですよね^^;
息子も2歳頃からジャンプを覚え、その高さは日に日に増しています。

お友達と同じように遊んでしまうこともあると思います。しかし、高所から飛び降りることは膝や足関節に大きなダメージを与えてしまうので「飛び降りる」という動作だけはしっかり注意して言い聞かせることが大切なようです。また自然出血と呼ばれるものも関節内に出血をもたらします。

 

自然出血とは?

自然出血とはいつの間にか出来ていたアザのように、知らない間に予想もせず起きる出血で、本当に些細なことが原因となります。

椅子から立ち上がった時、長時間立ちっぱなしだった時、階段の上り下り、床の凸凹。いつもと違うスポーツに挑戦してみた時、いつもと違う靴を履いた時など、普段の生活や環境が変化したことが出血の原因となります。

 

しかし、この自然出血は健常者にも起こっている出血で、血友病患者さまでも定期補充療法をしっかりしていれば止血できる出血です。出血につながる大きな原因が見つからなかった際、いつもと違う環境にいなかったか考えてみるのもいいかもしれません。

 

自然出血を学ぶと、旅行に行く前に行う補充療法には、万が一の大きな出血を防ぐほかに、いつもと違う環境で起こる自然出血を防ぐという意味も含まれていると考えられますね^^



関節内出血を防ぐには?

上記でお伝えしたように、関節内出血は激しい動き・衝撃で起こります。

しかし、いくら激しい動きを制限しても自然出血はどんな環境でも起こってしまうので、出血を防ぐには血液製剤を投与することが最優先となるわけですが、体への強い衝撃を緩和・回避し出血の量を減らすことも関節内出血を防ぐことに繋がると考えます。

 

まず、血友病治療の基本として、幼児で注意したい「高所からの飛び降りる」という行為のように、激しい運動は避けなければなりません。

 

血友病の重症度に関わらずボクシングやラグビーなどは推奨されないスポーツですが、幼少期からの定期補充療法の導入もあって、近年では様々なスポーツに積極的に取り組まれています。それでもサッカーやバレーボール・バスケットボールなど激しいものあるので、出血時のケアはしっかりしていかなければなりません。

また「関節内出血を起こしたくない」と運動しないのも返って逆効果となります。

 

関節を守るために筋肉を作ろう

「動かなければ出血しない」と考えてしまいそうですが、運動しないと筋肉が衰え関節内出血を起こしてしまいます。関節を守るためには適度な運動が必要なのです。

 

『水泳』は関節への負担が軽い上に、しっかりと筋肉を動かすことができるため、血友病患者さまに推奨されています。ただし、プールサイドでの転倒については健常者と同様危険ですので注意が必要です。

適度な運動はバランス感覚を養って転倒を防ぐことにもつながります。同時に体重管理もしっかり行い、関節への負担を軽減させることも関節内出血の予防となりますね。

 

関節を守るための環境づくりをしよう!

特に幼児期は運動の制限が難しいため、親がその環境を作ってあげることが大切になります。

 

【衝撃を減らすための環境づくりの一例】
・衝撃を吸収する素材の床やマットを使用する
・足関節を守るために足首を守ってくれるハイカットスニーカーを使用する
・歩行時に自然な体重移動を促してくれるロッカーボトムシューズを使用する
・足関節に血友病性関節症を伴う場合は、整形靴やインソール・装具の使用が好ましい

 

我が家でも床にはジョイントマットを敷き、靴は全てハイカットスニカーを使用しています。親としても注意してばかりでは辛いので、できる範囲で環境を作り、多少のことは製剤の効果を信じて目を瞑るという感じでもいいのではないでしょうか^^

 

それでは最後に『血友病性関節症』について見ていきましょう。



血友病性関節症とは

関節内出血を繰り返すと、関節内にある滑膜(かつまく)の滑りがだんだん悪くなっていきます。それにより関節の動きが悪くなり、関節が曲がりにくくなったり伸ばしにくくなったりします。

この状態がさらに進行すると、関節が破壊されて変形し、軟骨どうしがぶつかって強い痛みを生じます。すると関節の動く範囲が狭くなり、最後には関節が動かなくなってしまいます。

 

 

血友病性関節症は、体重のかかりやすい膝関節に多く見られるようで、膝関節出血時の治療は絶対安静のため歩行が禁止され、膝以外の関節の可動域が狭まります。そのため、筋肉低下などにより、さらに関節への負担が増してしまいます。

 

また関節内出血が同じ部位で繰り返されると、標的関節と言って出血しやすい部位となり血友病性関節症をまねく悪循環を生んでしまいます。

血友病性関節症を避けるため、進行を遅らせるためには、以下のことが重要となります。

 

・定期補充療法により関節内出血を予防する
・関節内出血が起きたらすぐに出血時補充療法を行う
・普段から適度な運動で筋肉をつけ関節を守る
・定期的に整形外科を受診し関節の状態を見てもらう
・関節内出血の治療後、少しずつでも関節機能を回復する理学療法(リハビリ)に励む

 

息子も関節内の状態を観察することを提案されています。現在歩行に問題はありませんが、自覚されていない微量の出血も確認することができるようで、「以前と変わっていないこと」を定期的に確認していくことが大切なようです。

まとめ

息子のような年代は、幼少期からの定期補充療法の導入により、関節内出血も昔ほど気にせず生活できるようになったのではと考える一方、避けなければならない動作やスポーツがあるように、治療法を間違えれば障害を背負ってしまう状態にあることも現実です。

 

自ら血友病と向き合えるようになるまでに大切なことは、「嘘をつかずに痛みを伝えられること」だと言います。

実は「怒られるから痛いことを言わない」という子どもが多いそうです。子どもが自ら「痛い」と伝えてくれた時は、「偉いね」「よく言えたね」と褒めてあげましょう。

また「出血後すぐに注射をすれば痛みが取れる」という経験を何度も繰り返すことも、血友病治療への理解を進めることにつながるようです。

 

 

現在2歳の息子。注射への恐怖心は少しずつ薄れ、当たり前の日常になってきましたが、当然病気のことは理解していません。もう少し大きくなれば疑問を持ち、拒む日だってあるかもしれません。

しかし、どれだけ拒んでも注射をやめる日が来ることはなく、やめれば障害を抱えてしまいます。

注射の際には、 「元気が出るお薬だよ」「これでいっぱい遊べるよ」と声をかけていますが、そういう些細な声かけも血友病治療に大切なことではないでしょうか。