災害時や緊急時の備えはできていますか?血友病を含む難病への救急対応の現実。
- 2019.09.23
- 基本情報
今回は、先日京都で開催された「全国ヘモフィリアフォーラム」にもあった【緊急時、災害時の対応】についてのお話です。血友病に限らず、特別な処置が必要なご家族様にも災害時や救急時の現実を知って頂き、自分たちにできること、日頃から備えておくべきことを一緒に考えていきましょう。
市で行われた【医療を要する児の災害への備えについて】の講習内容の記事はこちら
災害時の救急対応の現実
近年、台風や記録的豪雨により大災害が日本の各地で起こっていますよね。幸い私たちは、特別大きな被害を受けず過ごしていますが、テレビで報道される非現実的な風景を見ていると「明日は我が身」と構えています。
ここで一番に考えるのが血友病を持つ息子のことで、何を持ってどのように避難すべきなのか?頭の中でシュミレーションしても実際に適切な行動をとることは困難に近いかもしれません。誰かの力を借りなければ行動できない状況も考えられます。
災害に合い助けが必要になった時、誰にどのように頼ればいいのか?血友病にも災害ガイドラインというものが存在します。
血友病患者への災害時支援計画指針
災害時、血友病を含む難病患者は「医療依存・介護依存の高さゆえに、本来最も配慮が必要とされる弱者でありながら、逆にやむなく後回しにされる可能性がある」と指摘されていました。
このような状況から平成28年度に「災害時難病患者個別支援計画を策定するための指針」が改定されました。この指針は「全国各自治体に対し求められたもの」ということを頭に入れて、下記の血友病患者への指針をご覧下さい。
【血友病患者への指針】
- 血友病では先天的に欠乏している血液凝固因子を血漿分画製剤の静脈注射で補充することによって出血の予防が可能である。在宅自己注射療法が普及している。
- 在宅注射療法を実施している血友病患者では、注射薬や注射キットを少なくとも1週間は準備しておく。(誰が準備するのでしょう?製剤を管理しているのは我々血友病患者では?)
- 避難所生活では薬剤の保管法にも注意する必要がある。(以下省略)(災害の混乱時、真夏・真冬に管理できる環境を誰が作ってくれるのでしょう?)
これを見ると自分の身は自分で守らなければと感じませんか?
近年の災害では、今まであまり被害を受けていなかった地域でも甚大な被害が起こっていることから、どの地域でもばらつきの無い災害支援が受けられる体制が作られています。医療品の供給にも力を入れていますが、残念ながら血友病薬は対象外のようです。しかし、医療品の供給を調整する「災害薬事コーディネーター」という方がいらっしゃるそうで、覚えておくと役立つかもしれないとのことです。
実際に被災者となった血友病患者様は、「自宅に製剤を保管していたので治療には困らなかった」とおっしゃっていました。製剤が命である血友病。緊急時に製剤が支給されにくいのであれば、自分たちでしっかり管理しなくてはなりませんね。
家庭輸注を導入されている方は、常に自宅にある製剤の数を確認し、なくなる前に病院へ取りに行くことを徹底し、万が一にも保管製剤が災害により紛失した場合のことも考え、製剤の保管場所を散す工夫が必要だと学びました。
また、災害時に処置をしてくれる多くの医師は血友病専門医ではありません。これもまた、血友病患者を大きく悩ませます。
災害時の医療現場
みなさん、医療ドラマである災害現場を思い浮かべてみて下さい。私はコードブルーが好きで再放送なんかも見ていましたが、災害時の処置は「トリアージ」によって振り分けられます。「トリアージ」は重症度によって治療の順番を決めるものですが、見た目では気づきにくい内部出血のある血友病の場合どのように判断されるでしょう?
- 頭を打ったが軽い出血だ
- 腹部が軽く痛むが外傷はない
- 体に違和感はあるが意識はしっかりしている
このような場合、トリアージはどのように判断されるでしょうか?
また、災害現場にいる多くの医師や搬送先の病院に、血友病専門医がいる確率は極めて低いようで、専門でない医師に自分の状況を説明し理解してもらえるでしょうか?私自身、かかりつけ病院にて主治医でない医師に定期補充してもらうだけでも、その治療法に不安を覚えた経験があるので、初見で専門外の医師に理解してもらうのは非常に難しいと感じます。
災害時はどんな被害に遭うか分かりません。負ってしまった傷が重大な出血へと繋がるものだったら・・・血友病治療において間違った治療は命取りにもなってしまいます。
では、このような状況ではどうなってしまうのでしょう。
- 災害の被害に遭い意識がなくなってしまった
- 血友病を知らせるものは持っていない
- トリアージはred tag(最優先治療群)だが専門医がいない
- 製剤の補充がされないまま、何らかの処置を受けた
血友病治療において手術時に製剤は必須。しかし、血友病という認識がなければもちろん補充されることはありません。このような非常時のために、私たちには何ができるのでしょうか??
緊急時のためにやっておくべき備えとは?
上記をご覧になり、皆さんはどのように感じられましたか?私は、「息子の命を守るのは私たち家族や息子本人しかいないのでは?」と感じてしまいました。
自分たちが被災者になってしまった時に備え、一般的な防災グッズに加え、製剤の確保は必須になるのではないでしょうか?上記で書いたように、製剤を散しておくことも一つの工夫ですね。また、緊急時にかかりつけ病院が機能していない可能性も考えられます。病気のことを知ってくれている病院を複数持っておく必要もありそうです。
また、住まいのハザードマップを確認し、家族で避難場所の打ち合わせをしておくなど、もしもの場合を想定したシュミレーションをしておくことも、突然訪れる災害の大きな備えになるでしょう。
ヘルプマーク・緊急連絡カードの問題点
皆さんは『ヘルプマーク』『緊急連絡カード』をご存知ですか?
- ヘルプマーク⇒見た目では分かりにくい障害を持つ方が身に付けることで、周囲からの援助を受けやすくするもの【駅で呼びかけされ認知度は高くなってきているが、電車では「席をお譲り下さい」の解釈のようです】
- 緊急連絡カード⇒障害の有無に関わらず、災害や緊急時の備えに身につけようと推進されているもので、カードの持ち主の名前や血液型、緊急連絡先等が書かれたカード【市区町村などで配布されていたり、血友病患者様であれば輸注手帳などに貼り付けられています】
救急隊の方は身分を確認するために財布をチェックするそうです。大人の方であれば財布に緊急連絡カードを入れておくと良いでしょう。免許証と合わせて見られる工夫をしておけば、見落としも無くなりそうですね。
ヘルプマーク・緊急連絡カードは病気を知らせる大事なアイテムですが、今回の講義でヘルプマーク・緊急連絡カードを使用されていた血友病患者様は大人・子供を含めほんの数人しかいらっしゃいませんでした。
大人の方は、「特に考えたこともなかった」「その時はその時だ」という意見や、「ヘルプマークや緊急連絡カードを身に付けたところで本当に十分な対応や処置がされるのか?」と不安を抱える意見がありました。また、子供に関しては「落としたらどうする?」というプライバシーの問題から身に付けるのを断念したという意見もありました。
しかし、ヘルプマーク・緊急連絡カードに関心を持っていなかった大人の血友病患者様でも「このような場面でどうしますか?」と質問されれば「やはりヘルプカード・緊急連絡カードはあるに越したことない」と改めて考えさせられるようでした。
子供を守るアイテムを作ろうプロジェクト始動
私たちも幼稚園入園の頃には息子に持たせたいと考えていますが、どこまで表記するのか?どのように持たせるのか?という疑問は尽きません。
しかし、今回ヘルプカード・緊急連絡カードの必要性を改めて勉強させられたので、『子供を守るアイテムを作ろうプロジェクト』を立ち上げることにしました。一からの物作りになるので不安はありますが、息子のような子供が安全に身に付けられるものを作り上げたいと思います。いいものが出来上がれば皆さんにも紹介させて下さいね^^
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